5、合流・幼馴染5人衆





「…やっと、見つけた…っ!」
肩で息をするオニキスは、はたから見ても疲れている。そんなに全力で走ってきたんだろうかとトパーズはふと思った。
「オニキス…だよね?」
「他の誰に見えるっていうんだ?」
不機嫌そうな顔でそう言った彼の顔を、なんだか久しぶりに見た気がして。思わずトパーズは笑い出してしまう。
「…何笑ってるんだよ」
「だって、オニキスの顔見たら、なんだか安心したんだもの」
まだくすくすと笑うトパーズに腑に落ちないものがあるものの、とにかく元気そうで何よりだと内心安堵のため息をつくオニキス。そこで初めて、彼女の後ろの2人に気がついた。
「トパーズ、その人達は…?」
「あ、そっか、紹介しなくちゃね。ええと、こちらはゴールド…さんと、クリス、さん。お2人とも、こっちはオニキスといって、私の幼馴染の1人で、―――セレビィの主です」
トパーズの紹介に、別々のところでお互いに硬直し、そして同時に叫び出した。
「ゴールドとクリス…ってこの2人が!?わ、若いけど、まさかあの2人の昔か!?」
「セレビィって…あの、ウバメの森の!?主ってどういうことなの!?」
まったく同じタイミングで叫んだオニキスとクリスに、トパーズはおろおろしながらも順番に答えていく。
「えと、若いけど確かにこの2人はあの2人だよ。それから…セレビィは、見てもらった方が早いかも」
すっとオニキスに視線を走らせれば、むこうもうなずいて1つモンスターボールを出す。
 ぽんっ、と。音を立てて現れたのは、まぎれもなく時を渡るポケモン、セレビィ。唖然とする2人の前で、オニキスはセレビィの頭を軽く撫でてやる。
「何考えてたのか知らんが、俺の手持ちになってくれてな。…こいつの力を借りて、トパーズ達を迎えにきたってわけさ。…そういやトパーズ、ニクスは?」
『あ、忘れてた』
3人同時のその言葉に、オニキスはちょっとニクスを哀れに思うのだった。そこで、後ろから聞こえるぱたぱたと言う音に、ふと思い出して振り返る。
「…そういや、俺の方も忘れてたな」
「忘れてたって…酷いわよ、オニキス〜っ」
「まったく、突然走り出すんだからな。多少は俺達のことも考えろ」
「…マリン!?それに、ジストまで!?」
「…え〜っと…」
新たな2名(トパーズとは面識あり)の出現に、どんどんついていけなくなるゴールドとクリス。
 そんな2人の様子に気付いたのか、今合流した2人のうちの1人、少年の方が、ふとゴールド達の方へ視線をむけた。
 少し癖のある茶髪、鋭い目つき。誰かに似ていると、クリスはふと思った。
「あ、ゴールドさんクリスさん、この2人は男の子の方がアメジスト、女の子の方がアクアマリンっていって、普段はジストとマリンって呼んでます」
「そっか」
思い出したように2人を紹介するトパーズに、ゴールドは適当に返事をする。よろしくお願いします、とぺこりとおじぎをするマリンに、クリスもおじぎをかえした。
「でも、4人かぁ…」
「バーカ。5人だよ」
ぼそっとつぶやいたトパーズに、すかさず口を挟むジスト。他の誰かが口を開く前に、彼はすっと一方向を指差した。
「おーいっ!なんで全員そろってるんだよーっ!」
手を振りながら叫んでいるのは、間違いなくニクスだろう。後ろにレッドとイエローの姿も見える。
「お前が最後だよ。ったく、遅い」
「オレのせいじゃないっての!」
ジストに言い返すニクスもまた楽しそうに笑っている。追いついたレッドとイエローは、さりげなくゴールドとクリスの隣に寄った。
「…なぁ、オレいまいちよくわかんないんだけど」
「大丈夫っスレッドさん。オレもっスから」
ぼそぼそと言葉をかわすレッドとゴールド。5人はいろいろ話していたが、やがてくるりと全員が4人の方を振り返った。
「それじゃ、改めて自己紹介させてもらいます。私はトパーズです」
「オレ、サードニクス!ニクスでいいからな」
最初にこの時代にきた2人が、真っ先に名乗り出る。
「オニキスだ」
「アメジスト。ジストでいい」
「アクアマリンです。マリンと呼んでください。…どうぞ、よろしくお願いします」
続いて次々に名乗る少年達に、ゴールド達4人は名前を覚えるので精一杯だった。
「丁寧にありがとうございます。ええと、僕は…」
「イエローさん、だろ?大丈夫、俺達の方はあんたたちの名前わかるから」
オニキスの言葉にきょとんとするレッドとイエロー。しかし、ゴールドとクリスは納得した。
「そっか、あなたたち、未来からきたんだっけね」
みんな未来の私達を知ってるんだね、と独り言のようにつぶやいたクリスの言葉に、しかしレッドとイエローは硬直した。
「…もしかして、知らなかったんスか?」
「今、初めて、聞いた」
呆然と未来からの来訪者達を見つめるレッド。イエローも同じような状況だ。ジストとニクスもぼそぼそと言葉を交わす。
「なんだお前、言ってなかったのか?」
「はは、言う機会がなくってさ〜…」
どうしても乾いた笑いになるニクスに、マリンは横でくすくすと笑っている。
「…でも、どうすんだトパーズ?合流したってことは、トキワにも行かなくていいし…未来に、帰れるんだろ?」
ゴールドの言葉に、トパーズはあ、と反応するものの、答えたのはオニキスだった。
「いや、今すぐ帰るのは無理だ。…セレビィが結構消耗してるから、休ませてやりたいし。できればこいつに一番負担のかからないウバメの森に行きたい」
いつのまにか彼はセレビィをボールに戻しており、そのボールにふれながらトパーズの代わりにそう答える。
「…じゃあ、次の目的地は決まりね」
そう言って、マリンはすっと港の方を指差した。
「幸い今日は出航日。…船でアサギまで行きましょ!」

 船の目の前で集まる9人。レッドとイエローは、どうやらこのまま帰るらしい。
「それじゃ、お世話になりました!」
「いや、こっちも楽しかったからな、気にするなよ」
ここまで連れてきてもらった礼を言うためか、レッドとニクスが向かい合っている。横から見てるとよく似てるな、とふとイエローは思った。
「ニクスっ!おいてくぞっ!」
「わぁった、今行くーっ!…それじゃレッドさん、イエローさん、お元気で!」
それだけ言って走りだそうとするニクスに、レッドは最後に一言、と思い声をかける。
「ジスト、だっけかあいつ。…仲いいのか?さっきからなんだかやりとりが多いし」
レッドのその言葉にニクスは一瞬きょとんとして、―――にっこりと笑顔で答えた。
「あいつは、オレのライバルで、親友ですから!」
ぐっと親指を立ててみせ、そのままくるっと向きを変えた。
 その背中もどんどん小さくなり、やがて人ごみの中へ消えていった。
「ライバルで親友、かぁ…」
「なんだか、レッドさんとグリーンさんみたいですね」
「そうかもな。…そういやあいつ、今ブルーといっしょにジョウトにいるんだよな。あいつらに会うこと、あったりしてな」
2人は彼らの乗った船をしばらく見守っていて―――やがてその場を後にした。



 


SEO対策 ショッピングカート レンタルサーバー /テキスト広告 アクセス解析 無料ホームページ ライブチャット ブログ