2、いきなり出会っちまいました





「…お、気がついたか?」
まだ定まらない視界の中で、2人ほど自分をのぞいているのだろうということだけが理解できた。
「大丈夫?」
だんだんはっきりしてくると、のぞきこむのはよく知った金と水晶の瞳だと気付く。あーあ、結局家出なんて無理だったのかと、トパーズは内心ため息をついていた。
「…父さん、母さん…」
しょうがないよね、森は家のすぐ近くだし…と半ばあきらめモードに突入した。のだが。
「はぁ?こいつ頭打ってんのかな。俺達そんな年じゃねーぞ?」
えぇ?
 少年の言葉にトパーズの意識ははっきりと覚醒した。―――そう、どう考えても今聞こえたのは少年の声。彼女の父ではありえない。トパーズはもう一度その人物をしっかりと見た。
 金の瞳に爆発した前髪、逆に被った帽子に手にはビリヤードのキュー。さらにいうならそばにいるもう1人(こちらは少女)はなんというかすごいくせっ毛で2つに縛った髪が前にはねている。
 トパーズは2人とも心当たりがある。よく、それはよく知っている人物のはずだ。問題は、見た目。どう見ても11、2才にしか見えないのは、彼女の気のせい…ではなさそうだ。え?でもちょっとまってよと頭が混乱するのを彼女は自覚していた。何故ってそれは、2人の姿。彼女の記憶の中の2人は―――確か30真ん中らへんじゃなかったろうか。
「オレの名前はゴールド!お嬢さんのお名前は?」
「え…あ、トパーズ…」
「ゴールドっ!もう、ナンパなんかしてる場合!?」
「いいじゃねえかよ、別にぃ〜」
「もう…っ。あ、ごめんね、気にしないで。私はクリスタル、みんなはクリスって呼ぶわ」
にこっと笑うクリスと名乗った少女、横でちょっとふてくされるゴールドと名乗った少年。―――ああ、日差しがとっても暖かくて眠たくなってきちゃった☆と思わず現実逃避。してる場合でもないが。そんなあまり正常ではない思考の中で、何かが足りないことにトパーズははたと気がついた。がばっと起き上がり周りを見ても、自分と2人しかいない。
「あの!ニクスは!?サードニクスっていう男の子、ここらへんにいませんでしたか!?」
「え…し、知らないけど…」
「―――そう、ですか…」
さっきまでいっしょにいたのにとは思うが、おそらくは先ほどの光のせいなのだろう。心配はしていないが他人に迷惑かけてるんじゃないかと思うとすごく不安だ。
「ええと、トパーズ…だよね。あなたは、どうしてこんなところにいるの?」
クリスの言葉に、トパーズはすぐには反応できなかった。
 別に、答えようかどうしようか迷った、というわけではない。ただ単に、いつもとのギャップがありすぎて硬直していただけだったが、そんなことをクリスがわかるはずもなく。
「あ、ごめん、言いたくないなら無理しなくてもいいから!」
「へ?あ、ち、違います、ちょっと驚いてただけです!…多分、ですけど。あたし、未来からきたんだと思います」
『えぇ!?』
今回驚くのは2人のほうだった。気持ちがちょっとわかるので思わず顔に笑みが浮かぶトパーズ。
「み、…未来ぃ!?」
「え、未来って、その…」
「ええと…お2人は今何歳ですか?」
質問の意味がわからずきょとんとするゴールドとクリスに、苦笑しながらトパーズが説明する。
「あたし、未来のお2人を知ってるんです。…多分、あと20年ぐらいは年くってます」
「にゃにぃぃっ!?」
さらっと言ったトパーズの発言に、思わず声をあげたのはゴールドの方だった。
「ってことはオレは30過ぎのおっさんか!?結婚は!?」
「してますよ」
「よっしゃぁ―――っ!よくやったオレっ!」
どんな美人の可愛い奥さんかな〜♪と想像をふくらませるゴールドは、クリスのおもしろくなさそうな視線にはまったく気付いていない。トパーズはこそこそとクリスの隣に移動すると、耳元でぼそっとささやいた。
「そんな顔しなくても、期待してていいと思いますよ」
「…え、えぇ!?あ、あの、それって…っ!?」
顔を赤らめるクリスに、この人もこんな可愛い時代があったのかと改めて思うがそれは心の中に秘め。これからどうしようと思い始めた時に、ゴールドのポケギアがなる。
「お、悪ぃ…へい。ゴールドっス」
『ゴールド?オレだよオレ』
「レッドさん?どーしたんスか?」
『あのさ、今お前の近くに、トパーズって女の子いないか?』
突然のレッドの言葉に唖然とするゴールド。その様子にクリスが声をかける。
「どうしたの?レッドさん、なんだって?」
「…トパーズって女の子が近くにいないかって…」
思わず2人とも彼女の方を振り返る。その視線に慌てつつ、彼女はゴールドのポケギアに話し掛けた。
「ええと…レッド、さん?もしかして、そちらにニクスが…」
『ああ。君がニクスの幼馴染のトパーズ?』
「はい。ニクス、そこにいるなら代わってもらってもいいですか?」
『ああ。…すごいなニクス、君の予想通りだよ』
くすくすと笑い声が聞こえる。ゴールドからポケギアを受け取ると、トパーズは思いっきり息を吸った。
「ニクスっ!迷惑かけてないでしょうね!?」
『わわわ、で、でかい声だすなよっ!大丈夫だって!』
「どーかしら?いつも大丈夫大丈夫って、こういう時はジスト以上にたちが悪いじゃない!」
その気迫に、後ろで聞いていたゴールドが「クリスみてぇ…」と思わずもらす。直後殴られる。
『はは、まーそう言うなって…。でも、やっぱりお前も親のとこにいたんだな』
後半は聞き取られないようにと、自然に声が小さくなる。
「うん。…ホント、最初はすごい驚いた…」
『まさか若い親父とお袋とはなぁ…。ま、そのうちオニキスが気付いてくれるだろうから、それまでの辛抱だろーな』
「そだね」
黒い髪の幼馴染はやろうと思えば時を渡れるので、2人は帰る事には心配していなかった。
 …帰る事と帰る方法には、心配していなかった。
「ねぇニクス」
『ん?』
「あたし…自信ないんだけど…」
『まぁ、なるようにしかならないさ。がんばれ』
「がんばれって…がんばれないよぉ〜…」
 むしろ心配なのは、幼馴染の一人が迎えにくるまで、自分達と同じぐらいの年の両親とともにすごさなければならないことだった。


 


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