1、ぷろろーぐ





少女が1人、道を走っていた。
 本当はスケボーに乗った方が早いのだが、目立つのでそうもいかない。ちょっと不安になって、彼女は腰に手を当てた。そこには慣れたボールの感触。ほっと安心したのも事実だった。
「…って、あたしどこまで行けばいいんだろ…」
やはり何も考えないで出てくるのは無謀だったのだろうか。浮かんだ考えを消すためにふるふると頭を振り、彼女は一度足を止めた。
 目の前に広がるのは、森。
「ウバメの森…」
つぶやいて、彼女は腰からボールを1つ取り出すと、かちっとボタンを押す。
 ぼんっ。
同時に出てきたのはヒノアラシ。彼女の相棒その1だ。
「ここは虫系のポケモンが多いもんね。よろしくね、ばくた」
主の言葉にこくりとうなずくと、ヒノアラシはてくてくと彼女の前を歩き出した。置いていかれないように(といってもヒノアラシは彼女を置いていくようなことはしないが)少女もまた歩き出す。
 …はずだったのだが。
「―――あれ、トパーズ?こんなところで何してるんだ?」
「わっ!?」
いきなり声をかけられるのは心臓に悪い。とくに、彼女―――トパーズのように、後ろめたいものがある人には。
 なんとか転ぶのだけはまぬがれた、という感じの様子の彼女に、ヒノアラシはちょっと呆れるのだった。
「…な、なんでニクスがここにいるの!?」
「なんでって、親父とお袋といっしょにお前んち行く途中。親父達は先に行ったけど、オレはちょっと歩いてここらへん見て回ろうと思ってさ」
トパーズがニクスと読んだ少年の、さらさらの金色の髪が風に揺れる。ああなんでこいつは男のくせにこんな髪の毛さらさらなんだろいーなーうらやましいー、と最近そういうのが気になるようになってきた少女は思う。もちろん今の状況にはまったく何の関係も無い。
「ってかお前、オレの質問に答えてない?」
「あー、き、気にしないでよ、うん。ちょっと散歩なだけ」
「散歩?じゃオレもいっしょに…」
「え!?」
やばい。そんなトパーズの心情などつゆ知らず、持ち前の鈍さを発揮するニクス。今回は彼の所為だけでもないが、トパーズはかなり慌てた。
「あ、あのねニクス!あたしちょっと1人で行きたいとこがあるの!だからちょっとはずしてくれるとうれしいというか…」
「行きたいとこ?散歩じゃなかったのか?」
「うっ!」
ごまかすつもりが痛いとこをつかれる。
「そ、その…」
何か言いかけたトパーズだが、後ろから気配を感じてはっと振り返る。そこには、緑色の光が彼女達の目の前にまで迫っていた。
「…な、何これ!?空間の歪み!?」
「なんで!?セレビィはもういないのに!?」
「そんなの、あたしに言われたってわからな―――」
トパーズの言葉を遮るように、辺りは眩しい光に包まれ。…次の瞬間、2人の姿は消えていた。


 


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