8.えぴろーぐ





 たとえ20年以上前の世界だとしても、その森は同じ姿だった。神秘的なものを感じる、少しだけ不気味な森。
「お二方、本当にありがとうございました」
ぺこりとおじぎをしたのは、未来5人組みの中でも最年長のマリン。いいのよ、とブルーは笑った。
「ま、どーせ時間も余ってたしね。…で、未来には帰れそう?」
からかうように彼女は言う。ちなみに事情はここに来るまでの空の上で話してある。…聞き出された、というのが正しいかもしれないが。
「大丈夫だろう。…それじゃあ、俺は先に言ってる」
それだけ言うとオニキスはすたすたとほこらの方へ歩いていってしまった。その後を慌ててトパーズが追いかけ、それにマリンも続いた。ニクスも歩き始めて―――動かないもう一人を振り返る。
「ジスト、帰ろうぜ?」
「わかってる」
彼の視線の先には、グリーンとブルー。…外見だけなら、ジストはグリーンとまるで兄弟のようによく似ていた。
「大変そう、だな」
その言葉が自分に向けられたものだとグリーンが気付くのに、少しの時間がかかったが。何を言いたいのかは不思議と理解した。
「まぁ、覚悟した上でだからな」
「ふぅん。…まあ、がんばってくれよ」
じゃあな、お2人さんとだけ言って、待っていたニクスと合流して、ジストも森の中へ消えた。
 数分後、森の中央部から緑の光が走った。

「未来からの来訪者、か」
信じられない、という様子でつぶやくシルバーに、でも事実みたいだぜ?とゴールドは肩をすくめる。
「オレたちの未来を知ってんだとよ。―――お前の未来も聞いときゃよかったなー」
「バカ言え、そんなもの知ってどうする。たとえ聞いたとしても、これからをつくるのは俺たち自身だろう」
「ま、それはそうなんだけどよ」
おもしろそうだろ?と笑うゴールドに、シルバーもクリスもため息をついた。
 船の上で波に揺られ、3人は久しぶりの会話を楽しんでいた。
「そーだシルバー、後でバトルしようぜ!」
「ふん、負けても泣くなよ」
「誰が泣くか、誰が!」
「お前意外に誰がいる」
「にゃにーっ!?」
「はいはい、2人ともストップストップ!」
青い空の下、明るい声が辺りに響いていた。

 オニキスに背中を押されて、ゆっくりとトパーズは扉に近づいた。
 ノブにかけようと近づける手が、少しだけ震えている。意を決してぐっと近づけ、勢いよくがちゃっと開いた。
 部屋の中にいたのは2人の人物。手前にいた男性が、すっと立ってトパーズに近づいた。奥にいる女性は、やれやれといった様子で笑いながら2人の方を見ていた。
「…あの、ただ、いま…」
だんだん声が小さくなっていくのが自分でもわかる。もう一度言い直そうとして、男性はトパーズの頭をくしゃっとなでた。
「ったく、心配かけさせんな、このバカ娘」
「…ごめんなさい…」
うつむいていた顔をちらりとあげれば、男性―――父と、目が合った。
 その瞳は彼女と同じ、きれいな金色。彼は笑って、もう一度頭を撫でた。
「おかえり」
その言葉が温かくて。トパーズは思わず、父親に抱きついていた。



 


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